ノースロンドンダービー
これまで数々のドラマを繰り広げてきた国内最熱のダービーの一つ
アーセナルは優勝争い、スパーズは4位争いのために一試合も落とすことができない状況でシーズンの最終局面にこのダービーが行われる。この要素がさらに今回のダービーの注目度を上げた。
ポステコグルー新監督の下で超攻撃的なサッカーがハマっていたが徐々に失速。逆に守備の脆さを突かれ、前節のように4失点を喫することも珍しくなかった。
その大敗からスパーズは2週間のインターバルがあった。対するアーセナルはスパーズのお休み中に4試合を戦った。コンディションの差はスパーズに分がある。
また、両チームともアウェイの戦績が悪い。昨季アーセナルはスパーズの本拠地で勝利を挙げたが、歴史上二季連続でアウェイで勝利したことがない。
地力ではアーセナルだが、色々な面でスパーズ優勢の可能性がある。
果たして、ノースロンドンは何色に染まるのか。
ざっくりマッチレビュー
トッテナム 2-3 アーセナル
トッテナム
13 | ヴィカーリオ |
17 | ロメロ ⚽️64′ |
37 | ファン・デ・フェン |
23 | ペドロ・ポロ |
33 | ベン・デイビス ⬇️88′ |
5 | ホイビュア ⚽️15′(OG) ⬇️64′ |
30 | ベンタンクール ⬇️46′ |
21 | クルゼフスキ |
10 | マディソン ⬇️64′ |
16 | ヴェルナー ⬇️31′ |
7 | ソン・フンミン ⚽️87′ |
22 | ブレナン・ジョンソン ⬆️31′ |
29 | サール ⬆️46′ |
8 | ビスマ ⬆️64′ |
9 | リシャルリソン ⬆️64′ |
18 | ロ・チェルソ ⬆️88′ |
アーセナル
22 | ラヤ |
2 | サリバ |
6 | ガブリエル |
4 | ホワイト |
18 | 冨安健洋 |
5 | トーマス・パーティ |
8 | ウーデゴール ⬇️89′ |
41 | ライス |
7 | サカ ⚽️ |
19 | トロサール ⬇️64′ |
29 | ハヴァーツ ⚽️38′ |
11 | マルティネッリ ⬆️64′ |
15 | キヴィオル ⬆️89′ |
アーセナルは二試合連続で同じスタメン。スパーズは前節から3名の変更があった。
スパーズはホームの勢い、十分な休養もあってか、序盤からアーセナルに襲いかかる。それに対してアーセナルもカウンターで応戦する。
均衡を破ったのはアーセナル。前半15分にコーナーキックでの競り合いでホイビュアに当たったボールがゴールに入り、オウンゴールで先制。
さらに27分にはカウンターからサカが2点目、37分にハヴァーツがコーナーを頭で合わせ3点目をゲット。
後半64分、ここで思わぬ事態。ラヤのパス?をカットしたロメロが難なく決めて1点を返す。84分にはPKをソンがしっかり決めて遂に1点差に。
しかし反撃もここまで。最後はアーセナルが逃げ切った。
2週間スパーズは寝てたのか?
これはこの試合の両チームのゴール期待値(定義はなんとなくまぁ、1試合で何点取れそうな感じだったかみたいな) 前半に至ってはアーセナルのゴール期待値は0.85、で、3点取ってる。
コスパが良すぎる。特にセットプレーでの得点は今やアーセナルの最大の武器の一つだ。アーセナルの武器がセットプレー? ヴェンゲル息してる?
サカやライスのキック精度、サリバ、ガブリエル、ハヴァーツの高さもそうだが、アーセナルのセットプレーの肝はホワイトのGK妨害。
GKの前に入り、ブロックすることでGKが前に出ることを防ぐ。キーパーチャージがないとはいえ、ファールにならないすれすれのブロックにホワイトの狡猾さが溢れている。
コーナーには色々ある。肘使ったり、足で踏ん張ったり。正味ゴール決まればなんだっていいんだよ。
Ben White on The SUN
奥さんとお家でゲームする時も、「勝たせる気はない」と言っている。某海賊漫画のコックさんとは真逆のマインドですね。この負けず嫌いがあのプレーにも出ているのか。
当然だが、他のチームはこのホワイトをブロックすることでアーセナルのセットプレーに対応している。しかしスパーズはどうだ。1、3点目ともにホワイトをフリーにしていた。
1点目はキーグロちょんちょんでGKの注意を引いたのが効き(マジで)、3点目は背後から前に出てブロック。まさにアサシンですよ。ホワイトなりの献身性がかっこいいです。
そんなことよりどうしたスパーズ。なんで? 2週間も時間があって? マジで助かるよ。スパーズが2週間ミーティングをしなかったか選手たち全員寝てたのか。準備不足で自らの首を絞めた。
その戦術を落とし込んだアーセナルのセットプレーコーチ、ニコラス・ジョバー。影の立役者と言っても過言ではない。スタッフたちの勝利でもある。ありがとう。
アーセナルのエース
全ての試合で言えることだが、特にこういったダービーはその雰囲気を楽しめる選手が活躍する。
今季、調子に波のあるサカだが、このアカデミー出身で生粋のガナーズである彼はもちろんこのノースロンドンダービーを愛している。
先制点のコーナーキックの場面
このコーナーを蹴る前にスパーズのサポーターから「お前は国民を失望させた!」と、かのユーロ2020決勝のPK失敗をいじるチャントを歌っていた。
しかしそんなサポーターの美声も虚しく、オウンゴールで自チームの選手に失望させられてしまう。
「え?あんだって?」 完全に志村けんさんが憑依したとしか思えないサカのカウンターパンチが炸裂。完全にこのダービーの楽しみ方を把握している。
お遊びはここまで。そして圧巻の2点目。
スパーズの猛攻に耐え、アーセナルのカウンター炸裂。自陣でハヴァーツがタメを作るとサカが一気にスプリント。攻撃に枚数をかけるスパーズの弱点をついた攻撃が始まる。
ハヴァーツはサカへ正確なミドルパス。ここからサカ劇場。
左足アウトの完璧なトラップはベルカンプ、DFを去なす切り返しはファン・ペルシー、正確なコントロールショットはアンリ。その姿は往年のエースたちの姿を彷彿とさせるゴールが決まった。
そして今季サカはダービーのホーム&アウェイで得点を挙げた。同一シーズンでこれを成し遂げた英国人はイアン・ライト以来30年ぶり。
このフィニッシュだけでなく、得意のドリブルでもキレキレだったサカは名実ともにアーセナルのエースだった。サカの次のステップはこれを継続することだ。